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ガラス化保存試験

着床率の向上に期待
体外受精卵の「ガラス化保存法」 体外受精卵移植で、約5〜10%の着床率向上が期 待される「ガラス化保存法」の実用化試験受け入 れ酪農家を(社)家畜改良事業団とJA安房では募集してい ます。
 牛の体外受精卵でのガラス化保存は1992 年、「家畜パイテクセンター」が世界に先駆け成 功した最先端技術。 今回の試験の対象はJA安房管内の酪農家。 試験の際、移植し生まれた牛はそ のまま受け入れ酪農家の所有となります。
 生産性の高い酪農経営実現のため、この実用化 試験にご協力いただける方は、ぜひJA安房まで ご連絡下さい。
「ガラス化保存法」と試験の概要 「ガラス化保存法」とは、 細胞を壊すことなく受精卵を 凍結させる技術。
 従来の凍結法では、凍 結の際、含まれる水分が氷と なり、細胞内小器官などを物 理的に破壊し、細胞を壊して しまっていました。この結果、 受精卵移植後の着床率の低下 を招いていました。
 しかしガラス化保存法の場 合、この細胞破壊が全く起こ りません。保存前の受精卵の 性質を保ったままの凍結保存 が可能となります。
これは、水に特定の物質を加えた場合、 凍りにくくなる性質を利用し、 水が氷になることを防いだも の。今までの試験で、ガラス 化保存を行った受精卵の細胞 の形体的損傷は認められず、 高い生存率が期待されていま す。
 今回の試験では、ガラス化 凍結された受精卵が果たしてど のくらい、実際の酪農家段階 で着床率の向上に役立つかを 確認する目的で実施されます。 管内でこのたび、試験が実施 される運びとなったのは、客 観的に比較検討できる正しい データが得られるよう、JA 安房の安定した移植接術が評 価を受けたことによるものです。
試験実施概要
項    目
内      容
種  雄  牛 「安福165の9」
試験実施規模 ガラス化保存法によるもの、対照として従来の保存法によるもの、
それぞれ30本の計60本。
試験実施期開 平成11年4月1日から同年7用31日の期間
料    金 受精卵は無料ただし、移植技術料として別途、
1万円(税別)が必要になります。
お問い合わせ JA安房畜産課 TEL.(22)9771

体外受精後7日目 ガラス化保存の有効性を実証する顕微鏡写真。
写真は体外受精してから7日目の受精卵で、凍結前 のもの。
 

右は、ガラス化保存後、融解して24時間、 培養したもの。
この様子から活力高い受精卵であることが うかがえる。
 

ガラス化保存とは?  生きた細胞を生きたまま半永久的に保存する凍結保存技術は現在、 精子や受精卵といった遺伝資源の保存のみならず、輸血や臓器移植の ための血球、骨髄細胞や生体組織など、様々な分野において幅広く利 用されつつある。
 生物試料を凍結保存した場合、通常細胞は低温(たとえ−196℃ であっても)によって直接、死滅することはない。凍結における細胞 に致死的な要因は、氷点(水が凍る温度)以下に冷却することによっ て、細胞内に発生した氷が、物理的に核やミトコンドリアといった細 胞内小器官などを破壊してしまうことだ。細胞はその約70%が水分で、 これが硬く大さな氷となって細胞を壊す。
 では、細胞を超低温にさ らしても細胞内の水を氷にしない方法はないものか?化学物質によっ て、水の性質を変え、液体窒素温度下でも氷ができないようにする… これが最近、世界の低温生物学者の間で注目を集めているガラス化保 存法だ。ガラス化保存法を用いると、冷却している間水は氷にならず、 液体の分子状態のまま、動さが止まる。塩分を含んだ海水は0℃でも 凍らず、水にアルコール類を添加した、ラジエーターの不凍液は、氷 点下の寒冷地でも液体状態を維持する。水は特定の物質を加えること によって、凍りにくくなる性質があり、方ラス化保存法はこの特徴を 応用している。
今回のガラス化液と希釈液  では、どんな物質を用いたらよいのか?そのヒントは寒冷地で厳し い寒さに耐えて生息している生物の体の仕組みにあった。冬を凍った 土の中で過ごすセミの一種は、寒くなると自ら体内にグリセリンを生 産し、体の水分を凍りにくくする。同じように、氷点下のツンドラで 生き続ける植物の多くは、冬になると体内にシユークロース(ショ糖) やソルビトールの濃度が急激に上昇する。また、南極の氷の海に生息 する極魚、ウナギやヒラメの一種や北限に分布するコメツキダマシム シの幼虫などは、その血液や体液中に凍らないタンパク質(AFGP) を多く持っており、氷の形成を防いでいる。
 凍結保存の研究開発分 野では実用的なガラス化保存法の確立のため、これらの様々な生体由 来の、あるいはそれに類した物質を用いて、より効果的な、すなわち 水晶形成抑制力が高く(=ガラス化形成能が高く)かつ細胞に対して 毒性の低いガラス化液の開発が精力的に行われている。
 牛の体外受精卵では1992年、家畜パイテクセンターが世界に先 駆けてガラス化保存に成功し、また電子辟微鏡を用いての細胞内外溶 液のガラス化形成の証明や、ガラス化保存における細胞傷害原因の解 明を行ってきた。また最近、ガラス化保存胚を人工授精並の簡便な操 作で移植でさる、ガラス化保存 −ダイレクト法を開発し、解凍後の高 い生存率や、受卵牛に移植後少例ながら高い受胎率が得られる、この 方法によって、最初に受胎した2頭はすでに分娩し、子牛は何の異常 もなく元気に育っている。

資料提供:桑山正成獣医学博士